プラットフォームビジネスは「限定した市場」から少しづつ獲得していくのが重要

前回のネットワーク外部性を持つ商社ビジネスがいかに強固な参入障壁を生みだすかという話をしましたがその最後にこれらを構築するために供給側、購入側双方のプラットフォームを最初に作り上げていくのが時間も労力もかかるのですが初期にとりかかったのが「プラットフォームは市場を限定させた所で獲得していく」という戦略を少し深掘りしてみたいと思います。

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いきなり供給側、客側のプラットフォームを作り上げようと思ってもどこから手をつけて良いかわからず、全てが中途半端で疲弊して終わってしまいますし、CAC ( Customer Acquisition Cost ) も大変高くついてしまいかねません。まずは限定された小さな市場にフォーカスして開始してそこでPMF(Product Market fit )を達成することができたらターゲットとする市場を徐々に広げていくのが重要です。特に会社立ち上げの初期の頃は会社のお金も今考えてもとても少ない資金で営業していたのでこの戦略はとても重要なものでした。

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私が行なっているのは貿易のビジネスですが貿易に限らずどのようなビジネスでも最初のPMFの達成がとても難易度が高く、また泥臭い仕事が求められます。よく何も知らない人たち同士の会話で「ビジネスの立ち上げ担当をしているよ」、などと聞くと何かカッコイイ響きがあり、スマートな仕事をしている人と感じると思うでしょうがが実際の最初の1歩であるPMF達成をできる人は自分が異業種、規模の違いも含めて様々見てきた限りでは泥臭い営業や仕事、また強引な推進力が必要な「力仕事」をすることに躊躇しない人種の人たちです。

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とは言えそのような泥臭い営業を何の羅針盤もなく航海に出てやるのはそれこそ心が折れますのでそのためにまずどの市場セグメントからはじめるとPMF達成できそうかと、市場を限定していく作業が重要になるのです。パレートの法則80:20の法則を聞いたことをある人は分かると思いますが、自らが持つプロダクトサービス利用者のうち20%が市場の80%利用を占めるというものだ。

スタートアップではまず最初のアーリーアダプターとも言える20%の人たちにプロダクトやサービスを使ってもらい、そこから細かいフィードバックをもらいながら改善をしつつ次のステップとして「拡販」を狙うのですが当時の自分たちの貿易のスクラップビジネスにおいては立ち上げ初期の2009年にいてはこれらの市場全体の20%においても顧客獲得は難易度が非常に高いと感じました。田所雅之の名著「起業の科学」の中の言葉を借りると「ボウリングのセンターピン」を見つける作業です。(センターピンにボールが当たると多くのピンを倒すことができる、という理論)、まずは当時の自分はあらゆるドミニカの自動車スクラップの関連会社を60−70社ほど走り回って営業をしてそこから何とかボウリングのセンターピンを5%ほど見つけるという作業をしました。この初期のセンターピンを見つけることができるかどうかがこれは貿易に限らずあらゆる世界中の全事業の最初の1歩であり、また自分の経験から見ても最も難しい作業です。やみくもに営業を回ってもどこにセンターピンがあると感じるか理解する力がないと単に重労働を続けるだけで最後は心が折れて撤退していく、という人たちもこの20年で腐るほど見てきました。

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では市場の20%にも満たない、2、3%のセンターピンしか獲得できない場合、事業がスケールできるのかという問題がありますがそこは全体の市場を常に俯瞰してみる、市場規模がどうなっていて競合の動きはどう作用していて自社との差別化ができそうかという観点で見るのが重要です。当時の自分たちの自動車のスクラップビジネスの業界というのは我々のように自動車スクラップ部品のプラットフォーム化を目指しているという競合は皆無でした。適切な言い方かは分かりませんが、供給側も客側も「その日暮らし、その日任せ」みたいな事業感覚を持つ人が多く、「運良く」自動車スクラップ部品が良い価格で供給できるサプライヤーを見つけた客だけが生き残っているというとても「運任せ」なビジネスとなっていたのです。

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結果として市場の大きさに対してセンターピンの客を捕まえた後で拡大の余地があると理解した我々は1人目、2人目の初期の客からフィードバックを得て改善をしたり、そこから失敗したことを次にはリカバリー、また地道な改善を重ねるなどをしながら徐々に拡大をしていくことができたのです。またこれはこのビジネスの可能性を一緒に信じて初期の頃から足並みをそろえて密のコミュニケーションを重ねてこれたビジネスパートナーの存在は今でも自分はとても感謝しておりこの出会いだけは「強運」だったと言えるでしょう。