ネットワーク外部性を持つ商社ビジネスは参入障壁が高いという話

弊社が創業時から取り組んできたビジネスの一つで日本から中南米に出荷するスクラップビジネスがあります。これは古くから日本の多くの専門商社や日本のスクラップ業者が手掛けてきたものですがそれまでのビジネスと最も違う所が、信頼できるビジネスパートナーさんとお互い足並みをそろえることで強力なネットワーク効果をうまく利用したビジネスにしてきたという点です。

「ネットワーク効果」とは一般的にはインターネットサービスなどに使われる言葉で同じプラットフォームやサービスを利用するユーザーが増加することによってそれ自体の価値が高まるビジネスのことです。例を挙げるとAir-bnbというサービスで供給サイドである不動産オーナーが増えるとサービス価値が上がり、サービスを使用(購入)する客も増える、サービスを使用する客が増えれば不動産オーナーにもメリットがあり供給側も増えやすくなり、プラットフォームの価値が高まるというものです。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

このような「ネットワーク効果」を使うビジネスは何もインターネットビジネスだけにとどまるものでなく実は商社、貿易のビジネスでは仮に立ち上げることに成功すれば商社ビジネスとして非常に息の長いビジネスになり得るものです。重要なのは売り手と買い手を結びつけるために相互に補完されるネットワークの構築が重要でもあり最も難易度が高いのが特徴的です。供給サイドであるスクラップ部品を集めることができなければそれらの買い手を集めることもできませんし、買い手を集める力がなければ供給サイドであるスクラップヤードを増やしていくこともできませんので「ニワトリと卵のジレンマ」に陥ってしまうのです。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

現在は日本の市場でスクラップ供給が20年前と比べても減少傾向もあり、また為替にも大きく左右される市場ですので市場の変化もとても激しい分野です。そのような中で供給側、買い手側、双方を並行して増やすのはこれらのビジネスに長く携わっっている自分から見ても大変難易度が高いものですが、一方でこれらの難易度をクリアしてネットワーク効果のあるプラットフォームを構築できれば大きなディフェンシビリティアセット(持続的競合優位性資産)になります。弊社も紆余曲折ある中でもこれらを長い時間をかけて構築してきたために15年以上、安定したキャッシュフローを生み出すビジネスになっております。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

このビジネスの立ち上げ時に長い付き合いのあるビジネスパートナーと協働して取り組んだのは「市場の限定戦略」と呼ばれるものです。つまり限定された市場から、徐々にプラットフォームを構築していくのです。中古のスクラップ部品と一口に言っても市場をフォーカスしないと大変広い定義になっていきますがまずはドミニカ共和国の市場に絞り、さらにその中でも地域によるセグメントを4つに分けていき最も攻めやすいと感じた所を集中的に立ち上げていくやり方です。

>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>

このやり方は実はアマゾンを立ち上げたジェフベゾスに学んだものでした。アマゾンはインターネットビジネスの最も成功したプラットフォームでありビジネス形態こそ貿易のビジネスとは大きく異なるものですが考え方は応用ができるのです。Amazonも当初は何でも商品を扱っていたわけでなく「書籍」というかなり市場を限定させてビジネスを立ち上げたという事例をこの貿易のビジネスにも応用させたわけです。